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ワークショップ活動

独自の調査・研究によるまちづくり提言や、遊学の場としての行催事、会員相互ならびに大阪市との情報交換、 またシンポジウム等の開催など、多彩な活動を展開しています。

2022年度~2023年度

ws-1

価値変化に伴う移動の本質を再考する

 2022 年度よりCITÉ さろんワークショップの座⾧を担当いたします。よろしくお願い致します。専門は交通工学・都市交通計画です。過去十数年は、歩行者・自転車交通政策にかかわりつつ、様々な海外都市における交通政策の調査研究を経験してきました。こういった経験をもとに、関西の都市について参加される皆さんと議論したいテーマは「価値変化に伴う移動の 本質を再考する」です。 2019 年に発生した新型コロナウイルス感染症は、ライフスタイル、働き方、移動のあり方など、我々がこれまで当たり前としてきた様々な価値観の前提条件を再考する機会となりました。中には、社会構造的な仕組みとともにトランジッションが起き

ws-2

エキサイティング・シティ・オオサカをどう実現するか

 現実世界とデジタル情報の融合、仮想空間と日常生活との融合は、社会や産業のあり方を根本から変えるといわれる。都市に求められる役割も大きく変化しているだろう。ワールスタイルやライフスタイルが劇的に変化した未来において、現実の都市の姿はどのようなものになっているだろうか。 おそらく世界中の都市において、老若男女や国籍を問わず多様な人材の交流を促し、多くの偶然の出会いや体験価値を生み出し、イノベーションや経済的活力を興し続ける都市戦略が実装されていくであろう。 この都市間競争の中で、大阪はワールドクラスのエキサイティング・シティたりえているだろうか? 活力や創造力をどれほど生み出せているだろうか?

ws-3

都市部の再生可能エネルギー源を探せ!循環型ゼロカーボンCITY への道

 多くの基礎自治体が,2050 年をめどにゼロカーボンCity をめざすことを宣言しているが,ほとんどは具体的な目標達成への道筋が見えているわけではなく,地域の実情に合った施策を模索中である。現実的には,直近2030 年までの中間目標を立て,コツコツと積み上げていく以外に方法はない。徹底的な省エネを実施してエネルギー消費を削減すること,またエネルギー利用効率の向上や再生可能エネルギーの利用率を向上することによるCO2 排出量の少ないエネルギー源を増やすことが必須である。 たとえば,大阪府・市では「おおさかエネルギー地産地消推進プラン(2014 年3 月策定)」の後継施策として「おおさかスマート

2020年度~2021年度

ws-1

withコロナ,afterコロナのモビリティを考える

 コロナ禍で多くの人がこれまで行ってきた移動(モビリティ)を取りやめざるを得なくなった.その中には,ラッシュ時の通勤のようになくなってよかったものあれば,親しい人との会食のための移動など,早期の再開が待ち遠しいモビリティもある.コロナ禍は,これまで何気なく行ってきたモビリティの意義と価値について改めて考える機会ともなった。 多くの都市施設は人々が集まって新しい知識を創造するために活用されてきた.過度に密な状況を避けざるを得ないコロナ禍において,そういったコミュニケーションを支える都市・交通施設についても新たな役割が求められる.このような都市施設へのモビリティについて,オンライン会議などバーチャ

ws-2

リノベーションの観点から考えるエリアのあり方

 「エリアリノベーション」、「エリアマネジメント」、「エリアブランディング」…という用語の台頭にみるように、計画や働きかけの単位が都市全体のスケールから「小さな空間」とその周辺の「エリア」に移ろうとしている。本ワークショップでは大阪を中心とした既成市街地における持続可能な「エリア」のあり方を考えたい。 Covid-19の影響を受けて、「新しい日常」が立ち上がろうとしている。人々が移動することで駆動してきた経済は足踏みを余儀なくされている一方で、都心部への通勤・通学は順次オンラインに置き換わり、人々の身体と暮らしを支える業態は人手が足りない。今後のウィルスの状況如何に関わらず、不可逆な変化を伴う

ws-3

コロナ禍を乗り越えて大阪の都市空間の再編を考える

 観光とは究極,人口移動の一種である。ある地域Aから別の地域Xへとある人Yが移動する。地域Aの持つプッシュ要因があって,地域Xのプル要因があって,目的地の地域イメージが多様なメディアによって社会的に構築され,ある人Yのモビリティが高まり,移動しようとする動機が芽生え,何らかの輸送手段を選択して移動する。人口移動のなかで観光を特徴づけるのは,このなかの動機が,余暇,娯楽,冒険や挑戦,未知の探求,異文化交流などと絡むことである。移動動機が純粋にビジネスであっても,仕事が終われば余暇や娯楽は生じるので,観光と全く無関係とは言えない。ただ観光の場合,移動先のX地域においてYが完全なる消費者であることは

平成30年度~平成31年度

ws-1

多様化した時代のコミュニケーションを見据えた都市・交通戦略

 近年人々の嗜好や行動パターン,家族形態などがますます多様化している。そのため,これまでのような典型的な世帯・個人を念頭においた都市・交通政策では対応しきれない点も多い。都市がこれまでに私たちの暮らしに対して果たしてきた役割は様々であるが,その役割の重要性は時代と共に変化する。
 友人や家族と実際に会って食事をとったり余暇を楽しんだりするといったコミュニケーションを実現することは,都市のもつ大きな機能の一つである。質の高いコミュニケーションをより効率的に実現するためには,適切な相手を見つけ出してその相手と確実に同じ時間を過ごすことが重要であるが,人々の嗜好や行動が多様化している現代では,家族や友人の間で予定を調整して共に行動することが実現しにくくなっている。
 以上のような背景に基づき,本WSでは,多様化した時代において都市の果たすべき役割について検討する。関西において今後整備される都市・交通インフラを念頭におきながら,質の高いコミュニケーションを実現するために必要な都市・交通戦略について考察する。

ws-2

まちづくりの観点から考えるリノベーションのあり方

 人口減少社会に入り、空き家・空き地の発生、またその発生が時間的・空間的に発生する「都市のスポンジ化」が進行しており、総合的、計画的な対応が求められている。一方で、対策の萌芽となるような空き家・空き地の活用の試みもある。なかでも、低廉な不動産である個々の物件を舞台にして、新しい価値を生み出すようなリノベーションの取り組みが展開している。特に、まちづくりの観点からは、リノベーションされた個々の物件が、地域の中で一定の数を占めることで、地域全体の価値向上が期待できるような「リノベーションまちづくり」、「エリアリノベーション」という概念が指摘されており、人口減少に伴い衰退する地域の課題解決の一方策として期待されている。
 個々のリノベーションは物件所有者や事業者などによる独自の取り組みであり、まちづくりの観点、あるいは都市政策の観点からは、個々の取り組みをいかに地域全体の価値向上につなげていくのか、地域社会とどのように関係づけるのか、あるいは地域への波及効果が現れるような個々のリノベーションのあり方はどのようなものか、といった課題が現れてきている。
 本WSでは、大阪を中心に展開している「エリアリノベーション」と捉えられる事例を取り上げ、まちづくりの観点からリノベーションのあり方を考察したい。

ws-3

国際観光で大阪・日本の次世代と未来を創る戦略

 近年,訪日外国人旅行者が急増するなか,インバウンド効果で大阪や関西各地が賑わう一方で,違法な民泊やタクシーも増え,京都などにおいては「観光公害」という課題も浮かびつつある。しかしながら,人口減少社会へ突入する日本を救うひとつの道筋は,間違いなく国際観光振興,特にインバウンド振興にあり,日本の既存のインフラや諸制度,究極は日本そのものが,アウトバウンド対応からインバウンド対応への構造転換を迫られていると言えよう。ラグビーワールドカップ,大阪サミット,東京オリンピック,大阪万博・統合型リゾートの誘致と,大阪や日本のインバウンドをめぐる状況は,ソフトもハードも,これからの数年間で必ず,急激な変貌を遂げるであろう。
 日本の繁栄や日本人の生活を維持発展させるためには,持続可能なインバウンド観光の在り方の検討が不可欠であり,訪日外国人旅行者を適切に呼び込み,日本各地の地域へ適切に誘いつなぎ,各地域での観光消費を高めるとともに,日本滞在の満足度も高め,訪日リピーターを獲得し続けなければならない。関西国際空港というゲイトウェイを持つ大阪には,単に大阪でのインバウンド振興を図るだけではなく,広く関西圏や中国,四国地方,さらには日本全国へ訪日外国人旅行者を誘う,ラグビーのスタンドオフのような結節点機能が求められている。国際観光で次世代と未来を創る戦略を練るなかで,大阪は先駆的な存在であるがゆえ,すでに課題や問題も浮かび,今後数年で予想される急激な変貌のもと,大阪に求められる機能や役割も劇的に変容するであろう。
 以上のような認識に基づいて,本ワークショップでは,例えば以下のような諸点について具体的な検討を行い,「国際観光で大阪・日本の次世代と未来を創る戦略」の策定を目指したい。

平成28年度~平成29年度

地域活性化に資する新たなエリアマネジメントの展開

 各地でのエリアマネジメントの取り組みの広がりや、大阪版BIDを始め、エリアマネジメントに向けた制度仕組みの充実もありエリアマネジメントは今後の都市づくりを担う重要な役割が期待される。
 また、近年は欧米のまちづくりの潮流として、観光や集客への応答が課題となっており、その方策のひとつにエリアマネジメントが位置づけられている。現在、大阪市を訪問する外国人旅行客は急増しており、今後のエリアマネジメントにおいても既存の資源を有効活用しつつ、その対応が求められる。
 本ワークショップでは、国内外におけるエリアマネジメントのなかで、とくに観光振興や土地利用の転換、不動産マネジメントなど地域の活性化に資する事業に取り組んでいるものやそれを支える制度仕組みに焦点をあて、今後のエリアマネジメントの展開可能性を考察する。

グローバル化に対応した外国人の居住環境

 世界規模で経済のグローバル化が進み、大阪は国際的な活力と魅力を持ち、多様な価値を認め合いながら持続的に発展する国際化戦略を掲げている。  成長目覚ましいアジア諸都市との競争が激化する中、大阪が国際競争力を高め、発展・成長を遂げるためには、質の高い生活環境を整備するとともに、新たなビジネスが創出されやすい環境を整備し、多様な文化や慣習への対応力を兼ね備えることで、世界・アジアから、多くの人・モノ・資金を呼び込める都市となることが必要になると考えられる。日本人・外国人が垣根なく、ビジネスや社会で活躍することで地域経済活性化が図られ、かつ、豊かで充実した生活ができる居住環境を整えることが、大阪の都市の魅力を高めていくことにつながる。  そのためには、外国人ビジネスパーソンによる都市や居住環境等のニーズ把握を踏まえながら、住まいや都市のハード的な整備だけでなく、例えば居住支援等の制度や仕組み、住まい手や住まい方も踏まえた多文化共生のコミュニティ等、様々な視点から外国人居住のあり方を考えることが望まれる。  よって本研究では、そのような観点を出発点として、グローバル化に対応した外国人の居住環境のあり方について議論していきたい。

比較優位の都市戦略 ~大阪がとるべき東京一極集中問題への解~

 経済格差や教育格差の拡大など国の発展を阻害する要因として東京一極集中の弊害が叫ばれて久しいが、集中は市場の生産性を高める効果をもたらし、国際都市間競争や税収効果等の面でいくつかのプラスも存在する功罪半ばする現象である。
 このような現状認識の下、盲目的に一極集中構造の解体を目指し、行政、司法など首都機能の分散や自治体による税制優遇による企業の本社移転など既存機能の移転のみに解決策を頼るのではなく、地域固有の資源(例えば歴史・文化資源や高齢労働者)を活かした首都圏に勝る(首都圏にない)競争力のある産業や空間を構築する比較優位の都市戦略が肝要である。
 このワークショップでは、まず最初に首座都市(人口第一位都市)とほぼ拮抗しながら機能移転ではなく、こういった比較優位の都市戦略で成長する事例の研究を行う。(例えば、オーストラリアのメルボルン、カナダのモントリオール、スペインのバルセロナ。州単位で見ればロサンゼルスに対するサンフランシスコなど)さらに、それぞれの都市戦略を分析、成長のための共通項や方程式を抽出し、大阪市の現状政策と比較しながら、独自の文化や産業に根ざした都市経営に資するための提言を経済分野のみならず、都市空間のデザイン等広い視点からの分析を行う。

平成26年度~平成27年度

BIDによる地域マネジメント

 成熟都市に適応した都市マネジメント手法あるいはまちづくりの手法としてエリアマネジメントが各地で展開しています。エリアマネジメントとは、一定のエリアを対象にして、民間主導のもと行政とのパートナーシップによって、住民・事業主・地権者等がかかわり合いながら、主体的に進めるまちづくりであり、また、「つくる」ことよりも「育てる」ことを主眼においている点に特徴があります。また、これらの取り組みを継続するための組織、事業、財源、公共空間を含む空間管理等もあわせて考えていく必要があります。
 欧米、とりわけアメリカの主要都市では、エリアマネジメント制度であるBID(Business Improvement District)が1960〜70年頃から前身となる制度設計が進み、80年代から本格的に導入が進んでいます。このようななか、大阪市では2014年3月に大阪市エリアマネジメント活動促進条例(通称:大阪版BID条例)が制定され、各地でその導入が期待されています。
 一方で、大阪の市街地は多様です。グランフロント大阪やOBPのような大規模再開発エリア、御堂筋・船場のような既成市街地エリア、心斎橋などの商店街を中心としたエリア、天王寺公園や大阪城のような公園を中心としたエリア、中之島や道頓堀など水辺市街地エリア、あるいは今後土地利用転換や都市機能の更新が想定されるエリアなど様々です。また、うめきた2期のようにみどりを中心とした新たなまちづくりも検討されており、こうした構想の実現には、効果的にBIDを導入していくことが不可欠と思われます。つまり、今後多様な市街地に対してBIDの活用方策を考えていくことが求められています。
 BIDについては、欧米と日本では法体系が異なることもあって、その導入に当たっては解決すべき課題もあります。また、民間が主体となって自律的な地域経営に取り組めるための環境整備を進めていく必要もあります。
 本ワークショップでは、こうした多様な大阪の市街地の特性を実際に体験し、理解しつつ、エリアの特性を踏まえた官民パートナーシップのあり方、民主導・地域主導のBID導入の可能性を探求するとともに、事業性や市場性も加味しつつ、規制緩和や社会実験などの手法も考えながらよりよい都市像への到達プロセスも含めて展望する未来志向の議論を進めていきたいと思います。皆さんとともに新たなネットワークやアイデアが広がる、創造的な場となることを期待しています。

人口減少社会の都心居住のあり方を考える

 大阪都心部においては、バブル経済崩壊後の地価の下落等を背景に、1990年後半以降からマンションの建設ラッシュが続き、人口増加傾向である「都心回帰」が目立つようになった。現在も大阪市域中心部を人口の増加傾向が続いている。
 この都心居住を取り巻く状況は、大きな転換期を迎えている。
 2009年に日本が人口減少社会に突入したといわれる中、大阪は3大都市圏の中で、最も早く人口減少を迎える都市となると見込まれており、人口減での空き家の増加や、税収減少下での施設維持コストなどの問題に直面している。一方で、東日本大震災後、これまでのライフスタイルや社会経済の構造を見直し、資源利用の大量消費社会から自然と共生する循環型社会への関心がより高まっている。さらには、スマートシティやスマートコミュニティといった、情報通信技術や環境技術などの先端技術を用いて社会インフラの効率化や高度化を目指した都市づくりが注目されている。また、モノやサービスを共有しようという「シェア」の概念が広がっている中、インターネットの普及を背景に地縁や血縁とは異なった趣味や好みを共有する新たなコミュニティが生まれている、などの動きもみられる。
 このように都心居住を取り巻く現状や変わりゆく社会の動向を見据えながら、
 ・都市構造や都市機能(都市計画からの視点)
 ・生活スタイル・コミュニティ(住まい手、住まい方からの視点)
 ・住空間デザイン(住まいに関する技術からの視点)
など様々な視点から都心居住のあり方を考えることができる。
 人口減少時代を迎えた今、将来への備えを考えつつ、循環型社会にふさわしい都心居住のあり方とはいかなるものなのだろうか?メンバーが興味を持つ観点を中心に議論していきたい。

統合型リゾート(IR)とまちづくり

 統合型リゾート(Integrated Resort;IR)という言葉は、シンガポール政府が2005年ころからカジノに代わり、使い始めた造語です。欧州諸国や韓国に見られる単体型 カジノと違い、統合型リゾートにはホテル、MICE施設、レストラン、エンターテイメント、ショッピングなどが併設されています。これは大企業の事業部制やカンパニー制 のような組織構造に似ています。IRは機能やターゲットが違う施設が集積することで、従来型のターゲットマーケティングを超えた、新しい観光ソリューションを提示して います。
 カジノとIRはどう違うのでしょうか?カジノとは賭博を目的とする施設で、古今東西、議論が絶えません。カジノという言葉はギャンブルを連想させ、ロジックでなく、 好き嫌いで評価されがちです。賭博については人それぞれ考え方が違います。個人の人生観や哲学が色濃く出てしまいがちなウェットな分野です。いっぽうで統合型リゾー トは地域活性化や雇用拡大、訪日外国人旅行者の増加などのドライな経済政策を目的としており、イデオロギー色がほとんどありません。
 本ワークショップでは、IRを課題実現のためのツールと位置づけたいと思います。IRを使ってどのような社会問題や経済問題を解くことができるのか?IRという“武器”を 持つことで、大阪でなにが可能となるのか?これからの都市はどのような“遊び”を内包すべきか?これらの諸問題について議論を深めたいと思います。

平成24年度~平成25年度

大阪のまちの文脈に “ならい”、“なりわい”を楽しむ

 これまで2期4年、ワークショップ1の座長を担当してきました。大阪のまちに潜む歴史や自然の文脈や、なりわいとランドスケープの関係の読み解き、まちづくりや活性化へと展開する方法などについて考えてきました。
 2012-2013年度はこれまでの取り組みの成果に基づいて、まちの“文脈”を読み込みながら、それを積極的に“楽しむ”方法に重点を置きます。大阪では公・共・私、さまざまな団体がいろいろなイベントを行っています。そうしたイベントに環境やランドスケープ、防災などの色合いを加味することはできないでしょうか?もちろんそうしたことにより経済的な効果を生みだすことも検討しなければなりません。
 具体的には、
 1.大阪市が主催するさまざまなイベントに参加し、新たな視点からその可能性を高める
 2.NPOやまちの有志が企画する個性的なイベントを体験し、その展開をはかる
 3.ワークショップ独自に企画し、自ら試す
 それらのイベントを通じて、
 ・自然環境やランドスケープなど、日ごろ見えていなかったまちの文脈、構造を見直す…
 ・イベントのなかで自らの生活を振り返り、見直す…
 ・災害などの非日常の事態をイベントのなかで経験することで、来るべき非常事態を予め
 体験し、防災への備えを再確認する…
 すでにこれまでの取り組みのなかで、ワークショップ1は、水都大阪2009や御堂筋パレードなどについて、それらを今までと異なる視点から見直す提案を行いつつあります。今年度はより具体的にその実現に向けて、検討を重ねたいと思います。
 斬新な企画、鋭い切り口、幅広い人脈とパワフルな実行力をお持ちの方、そうではないが、何かしらやってみよう…とお考えの方の積極的なご参加をお待ちしております。

企業の地域活動・まちづくり活動への貢献について

 新しい公共や協働のまちづくりなど、地域のガバナンスのあり方が大きく転換する今、地域のなかで企業がどのような役割を演じていけばいいかを考えていきたい。企業としても社会貢献活動(CSR Corporate Social Responsibility)が問われており、2010年にはISO26000としてガイドラインが規格化されるなど、社会から注目されている。
 ワークショップでは、エリアマネジメントや地域まちづくりの中で、企業に求められる姿勢や活動について考察を行う。日本だけでなく世界の好事例を収集・分析し、地域活動のステークホルダーとして企業がどのように行動していけばいいのかを考えていく。また、パートナーとしての行政や地域組織、NPOなど他主体の振舞いや企業へのニーズを捉え、それに応えるための企業活動のあり方について検討を加える。
 一方、企業活動としても経済のグローバル化競争に勝ち残る戦略だけでなく、コミュニティ・ビジネスやソーシャル・ビジネスといった地域社会のニーズをビジネスチャンスに活かす戦略も取られ始めている。こうした動きとしてイギリスのソーシャル・エンタープライズやイタリアの社会的協同組合などが注目をあびている。奇しくも2012年は国連の「国際協同組合年(International Year of Co-operatives)でもあり、地域貢献をビジネスに活かすもう一つの企業活動の展開について参加者同士の議論の中でその可能性を考えたいと思う。
 売り手よし・買い手よし・世間よしという近江商人の「三方よし」の理念に学び、新しい時代にふさわしい企業の地域活動・まちづくり活動のあり方について論議したいと考えている。

グローバル化した世界と向き合う大阪のあり方を考える

 世界のグローバル化が進んでいる。物、人、金、情報がかつてないスピードで動き回る時代だ。移動・交易を支える輸送技術の発達、情報流通を飛躍的に向上させるIT技術の誕生と成長、さらに関税障壁の撤廃やビザの簡素化など制度的な変化も後押しして、世界の経済・社会活動のすべての流れが、かつてないほど早く、激しく動くようになっている。
 グローバル化の進展によって、様々な企業活動が世界レベルで効率化されることにより、多くの人々が貧困から救われる。様々な出自・能力を持った人々が互いに交流し切磋琢磨しあうことにより、豊かで創造的な財やサービスが次々に生み出される。そしてグローバル化した世界では、こうした恩恵を人類全体で享受できる。そう唱える者がいる。他方で全く逆のことを唱える者もいる。グローバル化による競争の末、少数の大企業が市場と経済を支配し、むしろ階層格差が拡大する。均一化された経済・社会の下で、創造的な活動の芽が摘み取られる。今の世界の状況をみると、功罪、どちらの状況もよく見られるような気がする。
 こうしたグローバル化の波は止められない。しかしグローバル化に対する都市の対応は様々だ。グローバル化を完全に受け入れて、世界と対峙しようとする都市がある。ニューヨークやロンドンのような金融都市、それにシンガポールのような都市国家だ。他方、グローバル化の波をある程度受け止めつつ、自らの個性や立ち位置を守り、むしろそれを売りにして世界と対峙しようとする都市がある。文化の香り高い欧州の都市、それもパリなどの大都市よりミュンヘンやバルセロナなど中都市に多い。
 大阪は、グローバル化とどう対峙していけばよいだろう。しかしそもそも大阪でグローバル化を感じる機会は、世界の他の都市より極めて少ない。このままでは、グローバル化への対応が大きく遅れ、手遅れになってしまうのではないか。
 このワークショップでは、グローバル化に対する大阪の立ち位置を考え、さらに具体的な方策について多方面から考えていきたい。大阪のモノを外国に売る、企業を受け入れる、観光客を呼び寄せる、外国人居住者を増やす、大阪にお金を集める、・・・メンバーが興味を持つ観点を中心に議論する。

平成22年度~平成23年度

“なりわい”とランドスケープから探る大阪のまちの文脈

 地球温暖化、生物多様性などの地球環境問題や都市の社会資本形成に対する「企業」の社会的取り組み・努力は、今や公共を補い、時にそれを凌ぐまちづくりへの活力、意欲になりつつある。思えば大阪のまちは、生業(なりわい)と密接に関係し形づくられてきた。商業は言うまでもなく、士農工商すべての産業と土地との関わりが、固有の文化と景観を形成してきた。大坂城築城に伴い地割され屋敷町となった上町台地、その地割を基盤とした明治期の軍事施設や工場。低湿地の新田開発や伝統野菜を育んできた農の風景。川辺、河岸の商工業とまちなみ、生活の風景…。それらは今なお、まちの「文脈」として風景に潜んでいる。
 “なりわい”と風景が生み出す大阪のまちの文脈を探りたい。そのために、まず私たちが日々生活する「会社」の周囲を眺めてみる。「御社はいつ現在の場所に立地し、その前は何があったのですか?周囲のまちとはどのような関係ですか?その跡は現在どのような形でまちに現れていますか?」当然、食や社交、遊興の場との繋がりも見逃せない。最終的には、まちにおける企業のアイデンティティ、まちづくりに関わる立場や「新たな公共」としての責任…などへと議論を発展させたい。詳細については、参加者との話し合いのなかで絞り込んでいく。
 今期もまた、今、ここにあるモノやコトを手がかりとしながら、自然環境を視野に入れた10年後、50年後の長期的な視野のまちづくりの提案へ結びつけられたら、と考えている。

「都市の“すきま”を繋ぐ都市環境づくり」~魅力ある“すきま”環境づくりから都市を見直す~

商店街を歩いていて、入りやすい店もあれば、何となく入りにくい店もある。堀川沿いを歩いていても、川側に表情を持った建物もあれば、川に背を向けたデザインの建物も多く見かける。また、御堂筋のような大街路沿いでも、前面の街路を無視し威張って建っている建物もあれば、道路と一体となり賑わいを演出している建物もある。これらは、2つの場所・空間を繋ぐ境界としての“すきま”の空間デザインが大いに関わっていると考えられる。
さて、都市内には、様々な“すきま”が存在する。例えば、道路と建物との境界を成す“すきま”としては、住宅地では「庭」であり、ビル街では「公開空地」等がこれにあたる。また、建物と建物との境界では「道路」がすきま空間といえ、河川とまちとでは「堤防部分、特に河川敷」、建物と空とでは「屋上」がすきま空間といえる。その他、海とまちとの境界、地上空間と地下空間との境界などにも多種多様なすきま空間が存在する。
かつて、大阪のまちを流れる堀川には、浜地と呼ばれる荷揚場があった。この空間は、舟運等の産業活動での重要な空間であるとともに、堀川とまちとをつなぐ都市活動を支える空間でもあった。また、農村集落では、入会地と呼ばれる村落全体で所有する土地があり、薪炭や用材、肥料用の落葉を採取した里山や、茅葺き屋根のためのカヤなどを採取した草刈場・採草地などがこれにあたる。これらの空間は、公的空間というよりは、集合住宅の共有地のような空間(コモン・スペース)であり、皆がある一定のルールを守りながら有効に利用していた。このように公と私との境界部のあいまいな“すきま”空間が都市環境にとって貴重であるといえよう。

多様な”持ち味”を活かす大阪と関西のグランドデザイン

今、大阪・関西のあり方が各界で問われている。
経済の側面としては、グローバル化や新興国の台頭による産業空洞化、人口減少・高齢化による活力減退といった日本全体にある程度共通する問題に加えて、企業本社をはじめとした中枢機能の東京流出、地域を代表する開発事業の遅れや不調、ものづくりを担う中小企業の衰退など、大阪・関西に特有の問題も多く見られる状況となっている。
また社会問題も全国的に大きく取り上げられている。とりわけ大阪は、ホームレス数、生活保護率、犯罪発生率など、いくつかの指標で全国各地と比較しても最悪といわれ、大阪という地域ブランドにも少なからぬ影響を与えているように思われる。
こうした状況の中で近年、大阪・関西の進むべき方向について、一部の政治家や有力者から様々な発言がなされている。税制・規制緩和の大阪特区構想、伊丹空港の廃止、空港を結ぶリニア鉄道建設、「関西州」や「大阪都」の創設などである。こうしたそれぞれの提言に対しては、受け取る各人によって賛否両論があると思われるが、そもそもこれらの提案はどのような根拠を基に発せられているのだろうか?。

平成20年度~平成21年度

自然環境をとらえたまちづくりとランドスケープデザイン

 まちづくりは、さまざまなヒトが参加しやモノや情報が集まってはじめて成立する。しかし、“まち”の基盤である自然環境について顧みられることは少ない。まちの自然環境は、まちづくりの「もの言わぬクライアント」でもある。アメリカの環境計画の先駆者、I・マクハーグはヒトと自然との共存を、「Design with Nature」と表現した。“of”でもなく“by”でもない、“with”の感覚は、21世紀のまちづくりのヒントとなるのではないだろうか。 今回のワークショップでは、日常生活の時間感覚を少し越えた視点から、まちの自然環境を読み解くことを試みる。多様な業種の人々が参加する本ワークショップの特徴を生かして、業種ごとの時間感覚を再認識したうえでまちの景観や歴史を見直し、その骨格となる自然環境を読み解く方法について考える。例えばフィールドワークでは、過去の写真や地図を手がかりにしつつ、まちに潜む自然環境とその発露を見つけ出し、現在、将来のまちづくりとの関連を考えてみたい。 今、ここにあるモノやコトを手がかりとしながら、自然環境を視野に入れた10年後、50年後の長期的な視野のまちづくりの提案へ結びつけられたら、と考えている。

「HEALING CITY」 ~“癒し”の都市環境づくり~

 現在、大都市における居住者やオフィス・ワーカーは、非常に環境圧の高い中での日常生活や営みを余儀なくされている。このような環境下においては、都市ストレスやテクノストレス等を解消し、健やかな日常を過ごすことのできる“癒し”の都市環境づくりが求められる。ここで、“癒し”とは、『苦しみや悲しみ、疲れを和らげるもの、さらに広く感情を穏やかに和ませること、心身ともにくつろいだ状態にすること』であるといえ、確かに、今話題になっている音楽、香り(アロマ)によるセラピーや、気功、マッサージ、体操、ヨーガなどによって人は癒される。しかしながら、日常の生活空間において“癒し”を感じる、また働く環境やその周辺で“癒し”を感じる、大阪はそういった街であってほしいと願う。そこで、本ワークショップでは、“癒し”をテーマに取り上げ、“癒しの環境づくり”、“癒しの風景づくり”、“癒しの場所づくり”といった視点から、企業・市民・行政の環境関連施策への取り組み状況調査や、“癒される”眺めのポイント探し、歴史・文化を感じたり落ち着きや和みを感じたりする“癒し”の場所探し等を行うことによって、『Healing City』としての大阪を目指した提言を行うことを目標としたい。

「創造都市・大阪をイメージする」

 「創造都市」とは「市民の活発な創造活動によって、先端的な芸術や豊かな生活文化を育み、革新的な産業を振興する『創造の場』に富んだ都市であり、温暖化などグローバルな環境問題を地域社会の草の根から持続的に解決する力に満ちた都市」のことです。「創造都市」は21世紀型の新たな都市モデルとして、また都市政策の目標として世界中で熱い注目を集めており、「創造都市」を標榜したり政策目標として掲げる都市が急速に増加してきています。大阪はかつて、難波津とよばれる水運の中心であり、経済・文化・宗教の中心として発展した大都市でした。商人と町衆の力で無数の橋を架けた美しい水辺空間を持ち、世界に先駆けて米取引の先物市場システムを産み出し、文楽に代表される洗練された上方文化を育むなど、世界に誇りうる「創造都市」だったのです。しかし近年、産業構造の変化と東京圏への一極集中化により、人口の減少や企業の工場・本社機能の流出、大学の郊外移転による知の流出などが続いた結果、大阪を取り巻く経済状況は悪化の一途をたどっており、都市としての魅力や競争力が衰えていく歴史的衰退期に陥っています。本ワークショップでは、このような厳しい状況の中、どのようにして市民の創造性を引き出し、豊かな歴史や伝統的な文化・芸術・産業のユニークさを活かした、個性的な都市の魅力づくりによって大阪を再生するのか、多面的に考えてみたいと思います。平成18-19年の活動では、大阪の中で創造都市をつくりあげる「クラスター」になりうる地域として中崎町、堀江、天保山などを取り上げ、それぞれの地域をさらにクリエイティブにしていくためのまちづくりについての提案を行いました。今期は「クリエイティブ産業」をキーワードとして、大阪におけるクリエイティブ産業の可能性や、クリエイティブ産業をまちづくりの中でどのように展開させていくかについて、クリエイターとの交流などの活動を通して進めていきます。