ワークショップ活動

「都市の“すきま”を繋ぐ都市環境づくり」~魅力ある“すきま”環境づくりから都市を見直す~

座長:
大阪府立大学大学院
生命環境科学研究科
准教授 下村 泰彦 氏
■主旨

商店街を歩いていて、入りやすい店もあれば、何となく入りにくい店もある。堀川沿いを歩いていても、川側に表情を持った建物もあれば、川に背を向けたデザインの建物も多く見かける。また、御堂筋のような大街路沿いでも、前面の街路を無視し威張って建っている建物もあれば、道路と一体となり賑わいを演出している建物もある。これらは、2つの場所・空間を繋ぐ境界としての“すきま”の空間デザインが大いに関わっていると考えられる。
さて、都市内には、様々な“すきま”が存在する。例えば、道路と建物との境界を成す“すきま”としては、住宅地では「庭」であり、ビル街では「公開空地」等がこれにあたる。また、建物と建物との境界では「道路」がすきま空間といえ、河川とまちとでは「堤防部分、特に河川敷」、建物と空とでは「屋上」がすきま空間といえる。その他、海とまちとの境界、地上空間と地下空間との境界などにも多種多様なすきま空間が存在する。
かつて、大阪のまちを流れる堀川には、浜地と呼ばれる荷揚場があった。この空間は、舟運等の産業活動での重要な空間であるとともに、堀川とまちとをつなぐ都市活動を支える空間でもあった。また、農村集落では、入会地と呼ばれる村落全体で所有する土地があり、薪炭や用材、肥料用の落葉を採取した里山や、茅葺き屋根のためのカヤなどを採取した草刈場・採草地などがこれにあたる。これらの空間は、公的空間というよりは、集合住宅の共有地のような空間(コモン・スペース)であり、皆がある一定のルールを守りながら有効に利用していた。このように公と私との境界部のあいまいな“すきま”空間が都市環境にとって貴重であるといえよう。

◆そこで、ワークショップ2では、都市内に残された“すきま”空間を探し出し、その場の空間形態のみならず、歴史や文化、地形や水・緑といった自然環境等々の特性に配慮しながら、魅力あるスポットとして、周辺と繋げていく方策を探りたい。

◆具体的には、・・・
すきまの特性によって、環境づくりの方向性は異なると思われる。 都市環境づくりにとって貴重な“すきま”探しから始め、その場に応じた環境づくりのテーマを探し出し、魅力づくりの方策を考えたい。

◆サブ・テーマに関しては、以下のキーワードが考えられる。
・建物と建物との境界:ビルの谷間の休憩スポット、ポケットパーク、癒しの修景装置
・建物と道路との境界:歩道や環境施設帯(側道)の環境づくり、街路樹による魅力づくり
・建物と空との境界:屋上緑化、高層建築物の眺望スポット
・河川とまちとの境界:水辺の公園や広場での憩いや癒し、眺望スポット、川とまちとの繋ぎ方
・海とまちとの境界:ウォータフロント、なぎさ林、干潟とビオトープ、眺望スポット
・地上空間と地下空間との境界:地上と地下空間をつなぐ広場 その他、すきま空間の特性に応じた憩い空間づくり、癒し空間づくり、眺望スポットづくりなど。

■座長プロフィール
下村 泰彦(しもむらやすひこ)
[img align=left]https://citesalon.jp/uploads/img0c997ad87d09de9cbb26d.jpg[/img] ◆ 出身地 大阪府(1958年生)
◆ 所 属
大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 准教授
緑地環境科学専攻 緑地環境科学分野 緑地保全・創成学講座
◆ 学 歴
大阪府立天王寺高等学校卒 大阪府立大学農学部農業工学科卒
大阪府立大学大学院農学研究科 博士前期課程 農業工学専攻 修了(1985年 3月)
博士(学術)の学位取得(大阪府立大学:1993年 2月)
論文題目:「都市街路における歩行空間整備に関する基礎的研究」

◆ 職 歴
・大阪府立大学農学部
 助 手(1985年 4月~)
 講 師(1993年 7月~)
 助教授(1997年 4月~)
・公立大学法人 大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 准教授(2007年4月:学校教育法改正)
・近畿大学理工学部非常勤講師 建築学科・土木工学科(1998.4~2000.3)
・大阪工業大学工学部非常勤講師 建築学科 (2003.4~現在に至る)
・大阪市立大学工学部非常勤講師 環境都市工学科(2008.6~現在に至る)
・アメリカ合衆国ボストン市へ在外研究員として派遣(1988)
・韓国ソウル市(ソウル大学)へ在外研究員として派遣(1994)
・中華人民共和国大連市・北京市へ在外研究員として派遣(2002)
・韓国ソウル市(ソウル大学)へ在外研究員として派遣(2004)
・中華人民共和国上海市へ在外研究員として派遣(2005)
◆ 専 門 緑地計画 景観計画
◆ 著書および主要論文(主要30報)

  • 農学から地域環境を考える(2003)分担共著:大阪公立大学出版会
  • 環境問題とは何か -12の扉から-(1999)分担共著:晃洋書房
  • 「これからの安全都市づくり 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて」(1995)分担共著:学芸出版社
  • 盆地都市京都における自然景観保全に関わる法規制と景観特性の変遷に関する研究(2009)ランドスケープ研究
  • 校庭の芝生化が児童のあそびの種類や身体動作に与える影響に関する研究(2009)環境情報科学論文集
  • 大阪市聖天山地区を事例とした風致地区制度と緑地景観の保全に関する研究(2008)都市計画論文集
  • CSR(企業の社会的責務)から捉えた地域の自然環境保全活動の位置づけに関する研究(2008)ランドスケープ研究
  • 堺市を事例とした大都市における市街化調整区域内の農地転用に関係する立地要因に関する研究(2006)環境情報科学論文集
  • 昭和30年代における子どもの屋外遊びを支えていた環境条件に関する研究(2006)ランドスケープ研究
  • 大阪市の市民に好まれる風景における緑の果たす役割に関する研究(2005)環境情報科学論文集
  • 市民参画型の里山管理における作業効率把握に関する研究(2005)ランドスケープ研究
  • Study on Environmental Changes of River in the Suburban Area and Transition of Relations between Residents and River(2004)Journal of Korean Institute of Landscape Architecture International Edition
  • Study on Inheritance of Historic Landscape Components Influencing Creation of Unique Urban Environments(2002) The 5th International Landscape Architectural Symposium of China, Japan and Korea
  • 建替団地居住者を対象とする写真投影法を通じた保存樹・保存物の風景的意義に関する研究-プロムナーデ関目を事例として -(2002)都市計画論文集
  • 大阪府岸和田市における竹林の拡大特性に関する研究(2002)ランドスケープ研究
  • 阪神・淡路大震災後の住宅更新時における緑の継承に関する研究(2002)ランドスケープ研究
  • Study on Change in Landscape Structure over Time in Suburban Area by Using GIS -Case Study of Kawachinagano City,
    Osaka-(2001)Journal of Korean Institute of Landscape Architecture International Edition
  • 「水の都」近世大坂における管理や利用面から捉えた水辺のデザインに関する研究(2001)日本都市計画学会学術研究論文集
  • ため池オアシス整備事業をケースとした緑地空間の住民参加型維持管理に関する研究(2001)ランドスケープ研究
  • 公開空地を対象とした民有地での連続緑化が果たす環境保全に係わる効果に関する研究(1998)ランドスケープ研究
  • 淀川水系、大和川水系での地域環境容量の変動に関する基礎的研究(1998)ランドスケープ研究
  • 淡路島における観光資源の分布パターンと観光動態との関係性に関する考察(1996)日本都市計画学会学術研究論文集
  • CGアニメーションを用いた都市河川空間の整備方法に関する研究(1996)ランドスケープ研究
  • GISを用いた大阪府南部地域をケーススタディとする土地利用変化に関する研究(1996)ランドスケープ研究
  • 近隣居住者の街区公園の利用行動に関する研究(1995)ランドスケープ研究
  • 堺市の南部丘陵をケーススタディとする小流域を単位とした農村景観の評価に関する研究(1995)ランドスケープ研究
  • 住民意識調査を通じたニュータウン内の保存緑地が保有する各種の効果に関する研究(1994)造園雑誌
  • 居住環境形成に係わる緑地の存在効果に関する研究(1993)造園雑誌
  • 画像処理システムを用いた河川空間整備手法に関する研究(1992)造園雑誌
  • フォトモンタージュ法を用いた街路修景・緑化手法に関する研究(1992)造園雑誌