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ワークショップ活動

価値変化に伴う移動の本質を再考する

座長:
大阪公立大学大学院工学研究科
都市系専攻(都市基盤計画)
准教授 吉田長裕 氏
■主旨

 2022 年度よりCITÉ さろんワークショップの座⾧を担当いたします。よろしくお願い致します。専門は交通工学・都市交通計画です。過去十数年は、歩行者・自転車交通政策にかかわりつつ、様々な海外都市における交通政策の調査研究を経験してきました。こういった経験をもとに、関西の都市について参加される皆さんと議論したいテーマは「価値変化に伴う移動の 本質を再考する」です。
 2019 年に発生した新型コロナウイルス感染症は、ライフスタイル、働き方、移動のあり方など、我々がこれまで当たり前としてきた様々な価値観の前提条件を再考する機会となりました。中には、社会構造的な仕組みとともにトランジッションが起きたものもあれば、変化した方が望ましいのに変化しなかったものもあるでしょう。
 私の専門とする都市交通に関していえば、技術的な側面に関しては、移動に関わる空間とともに大きな変化がおきつつあります。例えば、移動の道具に関しては、CASE(接続・自動運転化・共有・電動化)というキーワード、移動サービスに関する新しい考え方としてMaaS(Mobility as a Service)があり、さらに直近では社会的距離の確保などもあるでしょう。このように、様々な要素技術の向上やその組み合わせによって、現状の移動のニーズに関する技術的課題については、将来的には解決できそうな見通しが示されています。こういったことを実現していく過程では、既存の移動に関する技術的な概念も変えていく必要がありますが、このような技術ド リブンによる移動の変化は、過去の延⾧線上にあることから、新たな価値観の変化を生まないかもしれません。その前に、移動に対する個人の価値の転換を導いたり、その価値=移動の本質の理解を深めておくことが重要だと考えています。別の言い方をすれば、移動の本質を捉え直し、既存の前提条件を否定しつつ新しい移動の価値をみつけ、その価値変化に向けて日々活動していかなければ、都市における移動のあり方は大きくは変わらないのではないでしょうか。
 過去の歴史を振り返りながら整理する上で重要なキーワードは、経済学でいう派生需要と本源的需要です。こういった手がかりをもとに、関西をフィールドに移動の本質について議論し、今後の展開に繋がるように期待しています。