大阪都心部においては、バブル経済崩壊後の地価の下落等を背景に、1990年後半以降からマンションの建設ラッシュが続き、人口増加傾向である「都心回帰」が目立つようになった。現在も大阪市域中心部を人口の増加傾向が続いている。
この都心居住を取り巻く状況は、大きな転換期を迎えている。
2009年に日本が人口減少社会に突入したといわれる中、大阪は3大都市圏の中で、最も早く人口減少を迎える都市となると見込まれており、人口減での空き家の増加や、税収減少下での施設維持コストなどの問題に直面している。一方で、東日本大震災後、これまでのライフスタイルや社会経済の構造を見直し、資源利用の大量消費社会から自然と共生する循環型社会への関心がより高まっている。さらには、スマートシティやスマートコミュニティといった、情報通信技術や環境技術などの先端技術を用いて社会インフラの効率化や高度化を目指した都市づくりが注目されている。また、モノやサービスを共有しようという「シェア」の概念が広がっている中、インターネットの普及を背景に地縁や血縁とは異なった趣味や好みを共有する新たなコミュニティが生まれている、などの動きもみられる。
このように都心居住を取り巻く現状や変わりゆく社会の動向を見据えながら、
・都市構造や都市機能(都市計画からの視点)
・生活スタイル・コミュニティ(住まい手、住まい方からの視点)
・住空間デザイン(住まいに関する技術からの視点)
など様々な視点から都心居住のあり方を考えることができる。
人口減少時代を迎えた今、将来への備えを考えつつ、循環型社会にふさわしい都心居住のあり方とはいかなるものなのだろうか?メンバーが興味を持つ観点を中心に議論していきたい。
■座長プロフィール
加賀 有津子(かが あつこ)
1987年 大阪大学工学部環境工学科卒
1987年 株式会社プラス・ワン設立参加
1989年 阪急電鉄株式会社入社
1996年 大阪大学大学院工学研究科環境工学専攻博士後期課程修了、博士 (工学)
2001年 大阪大学大学院工学研究科 現在に至る
専門
建築・都市計画、環境デザイン、合意形成、空間情報学
主な著書
・『参加型社会の決め方』(共著、近代科学社)2004年
・『ユビキタスは建築をどう変えるか』(共著、彰国社)2007年