「エリアリノベーション」、「エリアマネジメント」、「エリアブランディング」…という用語の台頭にみるように、計画や働きかけの単位が都市全体のスケールから「小さな空間」とその周辺の「エリア」に移ろうとしている。本ワークショップでは大阪を中心とした既成市街地における持続可能な「エリア」のあり方を考えたい。
Covid-19の影響を受けて、「新しい日常」が立ち上がろうとしている。人々が移動することで駆動してきた経済は足踏みを余儀なくされている一方で、都心部への通勤・通学は順次オンラインに置き換わり、人々の身体と暮らしを支える業態は人手が足りない。今後のウィルスの状況如何に関わらず、不可逆な変化を伴う「新しい日常」が現れつつある。この「新しい日常」で着目されるのも「エリア」ではないか。
人々の都心部への移動が抑制された結果、在宅勤務が多く選択され、自宅近くのスーパーや公園、河川敷といった公共空間には多くの人々が足を運んだ。身近な生活圏が再評価される中で、在宅勤務の課題も浮かび上がってきた。新しい「界隈」あるいは、新しい「近隣住区」といえるような「エリア」のあり方が再考されようとしている。
この「エリア」を考える際に、「リノベーション」を手がかりとしたい。Covid-19以前から、ストック活用型の社会への転換が模索されてきている。人口減少化において、空き家・空き地の発生、またその発生が時間的・空間的に発生する「都市のスポンジ化」が進行している一方で、対策の萌芽となるような空き家・空き地の活用の試みもある。なかでも、低廉な不動産である個々の物件を舞台にして、新しい価値を生み出す「リノベーション」の取り組みが広がりつつある。まちづくりの観点からは、「リノベーション」された個々の物件が、地域の中で一定の数を占めることで、地域全体の価値向上が期待できるような「リノベーションまちづくり」、「エリアリノベーション」という概念が指摘されており、人口減少に伴い衰退する地域の課題解決の一方策として期待されている。個々のリノベーションは物件所有者や事業者などによる独自の取り組みであり、まちづくりの観点、あるいは都市政策の観点からは、個々の取り組みをいかに「エリア」の価値向上につなげていくのか、「エリア」への波及効果が現れるような個々のリノベーションのあり方はどのようなものか、といった課題がある。
本ワークショップでは、大阪を中心に展開している「エリアリノベーション」と捉えられる事例を取り上げ、リノベーションの観点から既成市街地における持続可能な「エリア」のあり方を考察したい。