ワークショップ活動

BIDによる地域マネジメント

座長:
大阪市立大学大学院
工学研究科都市系専攻
准教授 嘉名 光市 氏
■主旨

 成熟都市に適応した都市マネジメント手法あるいはまちづくりの手法としてエリアマネジメントが各地で展開しています。エリアマネジメントとは、一定のエリアを対象にして、民間主導のもと行政とのパートナーシップによって、住民・事業主・地権者等がかかわり合いながら、主体的に進めるまちづくりであり、また、「つくる」ことよりも「育てる」ことを主眼においている点に特徴があります。また、これらの取り組みを継続するための組織、事業、財源、公共空間を含む空間管理等もあわせて考えていく必要があります。
 欧米、とりわけアメリカの主要都市では、エリアマネジメント制度であるBID(Business Improvement District)が1960〜70年頃から前身となる制度設計が進み、80年代から本格的に導入が進んでいます。このようななか、大阪市では2014年3月に大阪市エリアマネジメント活動促進条例(通称:大阪版BID条例)が制定され、各地でその導入が期待されています。
 一方で、大阪の市街地は多様です。グランフロント大阪やOBPのような大規模再開発エリア、御堂筋・船場のような既成市街地エリア、心斎橋などの商店街を中心としたエリア、天王寺公園や大阪城のような公園を中心としたエリア、中之島や道頓堀など水辺市街地エリア、あるいは今後土地利用転換や都市機能の更新が想定されるエリアなど様々です。また、うめきた2期のようにみどりを中心とした新たなまちづくりも検討されており、こうした構想の実現には、効果的にBIDを導入していくことが不可欠と思われます。つまり、今後多様な市街地に対してBIDの活用方策を考えていくことが求められています。
 BIDについては、欧米と日本では法体系が異なることもあって、その導入に当たっては解決すべき課題もあります。また、民間が主体となって自律的な地域経営に取り組めるための環境整備を進めていく必要もあります。
 本ワークショップでは、こうした多様な大阪の市街地の特性を実際に体験し、理解しつつ、エリアの特性を踏まえた官民パートナーシップのあり方、民主導・地域主導のBID導入の可能性を探求するとともに、事業性や市場性も加味しつつ、規制緩和や社会実験などの手法も考えながらよりよい都市像への到達プロセスも含めて展望する未来志向の議論を進めていきたいと思います。皆さんとともに新たなネットワークやアイデアが広がる、創造的な場となることを期待しています。

■座長プロフィール
嘉名 光市(かな こういち)

1968年 大阪府生まれ
1992年 東京工業大学工学部社会工学科卒業
1992年 株式会社三和総合研究所研究開発本部 研究員
2001年 東京工業大学大学院社会理工学研究科修了
2002年 株式会社UFJ総合研究所都市・地域再生マネジメント室 主任研究員
2003年 大阪市立大学大学院工学研究科都市系専攻 講師
2006年 大阪市立大学大学院工学研究科都市系専攻 准教授

専門
 都市計画,都市デザイン,景観論,都市計画・デザイン史,都市再生論

主な著書
・『生活景-身近な景観価値の発見とまちづくり』(共著、学芸出版社)2009年
・『景観再考 景観からのゆたかな人間環境づくり宣言』(共著、鹿島出版会)2013年