「数々のビッグヒットは、生活研究から始まります」元松下電器・デザイナーの巽正和氏が語るキーワード。誰もが知る「ホームランドリーの洗濯機・乾燥機」、「ゴミ捨て紙パック付き掃除機」、「コードレスアイロン」、「IHジャー炊飯器」など、席を立ち上がり全身を使って、時代を画した製品の開発話を繰り広げ、時にはぶっちゃけトークに爆笑も。30数名の参加者は、大熱演のトークを堪能しました。主要な論点をピック・アップして紹介します。2月1日(月)の第4回は、ダイハツ・カーデザイナーの桑畑周右氏。一人の主婦の苦情から始まった「ミラ」の開発。圧倒的人気を博し、それ以後のスモールカーのモデルにもなりました。愛される大衆車を生み出す秘策を熱く語ります。ご期待ください。CITÉトークセッション デザインから大阪を見つめる。 ・・・・都市デザインから生活用品まで・・・・ 第3回・2010年1月14日(木) ●総合家電メーカーのデザイン発想「関西の生活文化の蓄積がものを言う」ゲスト:巽正和氏(元松下電器・電化事業本部デザイン部長) コーディネーター:菅谷富夫氏(大阪市立近代美術館建設準備室主任学芸員)<ピックアップ>菅谷:巽さんは松下電器のデザイナーとして、開発部門を中心に活躍されてきました。松下電器の電化製品が大阪の暮らしに与えた影響は決して小さくありません。以前、巽さんが人間工学について書かれた文章に、「デザイナーは社会のオピニオンリーダーであるという観点に立てば、人間にとって少しでも意義のあるものを開発することは正しいことであり、他者に模倣されようがそれが世の中に普及することを考えれば、社会的に善であると考えなければならない」とあって、とても印象的でした。デザインの力が世の中に普及することは善なのか。そういった視点からもお話しを伺えればと思います。巽:創業者、松下幸之助が手掛けたものにアタッチメントプラグがあります。昔は電灯が一部屋に一つあればいい方で、コンセントなんてありませんでした。そこでアタッチメントプラグを差し込み、アイロンなどの電源に使う。ユーザーが何を欲しがっているかを見据えた、画期的な電化商品でした。松下幸之助の素晴らしいところは、こんなふうに消費者の目線でものを作ろうとしたところです。 私が電化事業本部で取り組んだ生活研究も、その精神に通じます。1978(昭和53)年に本社から電化事業本部へ転勤してきた頃は、洗濯機の普及率は99%、掃除機やアイロンもほぼ家庭に一台ある状況でした。その中で、どんな新商品を開発するか。大いに役立ったのが生活研究です。デザイナーは学校でデザインの勉強をするけれど、家事の経験はほとんどない。そこでデザイナー自ら行ったのが、ホームビジュアル調査です。一般家庭を訪ねて、洗濯機置き場、台所といった家事の現場をありのまま見せてもらい、困っている点、汚れ具合などを調査するのです。散らかっているからと嫌がられるところをなんとかお願いし、当時あこがれの対象だった千里でよく実施しました。もう一つの手法がHALSアドバイザー。さまざまな世代の家事が得意な主婦を集めて、商品の使い勝手を試し、生の声から改良点を考えていく。こういうふうに生活を研究するところから、新たな定番となる電化製品が誕生したわけです。 世界では今、電化製品の売上げは韓国のメーカーがトップを占めています。BRICs=ブラジル、ロシア、インド、中国で売れることが最重要と言われていますが、日本のメーカーのものは立派過ぎて売れないそうです。洗濯機に全自動は必要なく、二槽式で十分洗える、月収で買えない価格のものは選ばないというのです。生活とは、衣食住、今は携帯電話やパソコンといった情報通信、それから車も必需品になってきています。文明と文化という視点から考えてみると、テレビやラジオは文明の利器、世界中どこでも音楽を聴けば人は嬉しくなる。けれど炊飯器は食文化によって全く必要とされない。これが文明と文化の違いです。国によって気候風土、生活習慣、経済力も違う。売ろうとするなら、現地の消費者の目線に立った、生活文化の研究が必須。日本は幸い技術があるのだから、交通整理さえすれば、目に止まるプランを出していくことができると思います。日本のものをそのまま持っていっても通用しない、実感のないところでデザインは生きません。そういった意味では、デザインの普及は善なのかなとも思いますね。<第4回以降のごあんない>CITÉトークセッション「デザインから大阪を見つめる。…都市デザインから生活用品まで」・18:30〜20:30(18:00開場)・トーク会場=i-spot<淀屋橋odona(オドナ)2階>・ 定員30名(参加費無料、当日先着順により受付します)第4回(2月1日(月))ゲスト:桑畑周右氏(京都精華大学非常勤講師、元ダイハツ・カーデザイナー)●大阪マインドが生きる車づくり「独自のスモールカーデザインを求めて」第5回(2月25日(木))ゲスト:板倉忠則氏(仮説創造研究所 クリエイティブディレクター)●ストリート系デザイナーの仕事「街の呼吸を伝える・アメリカ村から大型商業施設まで」●コーディネーター(毎回)=菅谷富夫氏(大阪市立近代美術館建設準備室 主任学芸員) ●このトークセッションの内容を冊子にまとめ、2010年3月、「CITE文庫」として発行する予定です。●アクセス→i-spot(アイ・スポット…大阪市中央区今橋4-1-1淀屋橋odona2階) TEL:06-4866-6803大阪市営地下鉄御堂筋線「淀屋橋」駅10番出口直結、京阪本線「淀屋橋」駅3番出口から徒歩1分http://www.city.osaka.lg.jp/keikakuchosei/page/0000018184.html●お問い合わせ:CITE(シテ)さろん広報委員会 (財)大阪市都市工学情報センター(担当:北辻・浜田)TEL:06-6949-1910